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住宅購入時に親からの支援なしの理由とは?支援ありのデメリットと贈与税/贈与税非課税措置の手続きや注意点について解説

住宅購入をする際に、親からの支援なしのケースと親からの支援ありのケースがあります。

親からの支援なしの場合、住宅購入費用のすべてを自分たちで用意しなければならないので、金銭的な負担は大きい傾向にあります。ですが、親からの支援ありの場合には、さまざまなルールを理解しておく必要があるので、労力がかかります。

この記事では、住宅購入時に親からの支援なしの理由をはじめ、親からの援助なしで住宅を購入する際の注意点と対処法、住宅購入時に親からの支援ありのデメリット、住宅購入時の親からの支援と贈与税について、贈与税非課税措置とは?その要件と申請手続きについて、詳しくご紹介いたします。

住宅購入時に親からの支援なしの理由とは?

親に経済的な余裕がなかったり、支援をすることを当たり前だと思っていなかったりする場合には、住宅を購入するときに親からの支援がないこともあります。

また、「経済的に自立して、自分の力で購入したい」といった理由や「お金を出されることで口を出されるのが嫌」といった理由で親からの支援を断る人もいます。

住宅を購入するときに、親から支援を受けない理由には、さまざまな背景があるといえるでしょう。

親の支援には2種類ある?

住宅購入時の親の支援というと、贈与を想像される方が多いのではないでしょうか?ですが、実は住宅購入時の親の支援には、「贈与」と「借入」があります。

贈与で親からの支援を受ける場合には、贈与に関するルールについてしっかりと学んでおく必要があります。贈与税の確定申告が必要となるため、それなりの手間がかかるので注意しましょう。

借入で親から支援を受ける場合には、返済条件を決めたり、借用書を作成したりする必要があります。親子間でそこまでする必要はないと思われるかもしれませんが、金銭トラブルは親子間でも起こりえます。

借入額も大きくなるため、必ず返済条件を決め、借用書を作成するようにしましょう。また、返済するときは返済したことが明確にわかるように銀行振り込みを利用するのを忘れてはいけません。

このように、親からの支援には2種類の方法があるため、支援してもらう場合には、どちらで支援をしてもらうかを考えておきましょう。

親からの援助なしで住宅を購入する際の注意点と対処法

親からの援助なしで住宅を購入するということは、住宅を購入する際にかかる費用をすべて自分たちで工面しなければならないということです。親からの援助がない場合は、住宅を購入する際の費用が足りないこともあるでしょう。

親からの支援なしで住宅を購入する際の注意点と対処法には、以下の3点があります。

  • 頭金が払えない
  • 親からの支援がないので余裕がない
  • 住宅ローン控除を満額受けられない可能性がある

それでは、親からの支援なしで住宅を購入する際の注意点と対処法について、それぞれ詳しく見ていきましょう。

頭金が払えない

親からの支援がなく、預貯金にも余裕がない場合には、頭金が払えないという状況に陥る可能性があります。

頭金は、購入する住宅の金額の20%とされているため、5,000万円の住宅を購入するのであれば、1,000万円の用意が必要ということになります。

頭金が支払えない場合には、頭金をなしにすることも可能です。頭金をなしにした場合には、購入する住宅の金額をすべて住宅ローンで返済することになります。

金利がかかってくるので、住宅ローンの返済額が頭金ありの場合よりも高額になってしまうというデメリットもあります。

親から支援がないので余裕がない

親からの支援がないので、住宅購入に必要な費用をすべて住宅ローンで賄わなければならなくなってしまいます。

住宅ローンを必要な最高額まで借りてしまうと、返済がギリギリになってしまい、住宅の修繕費や家具家電の買い替えの費用などの用意ができなくなってしまう可能性があるので注意が必要です。

親からの支援がない場合、住宅を購入する際には、住宅ローンの費用から購入する住宅の金額を決めるようにしましょう。

住宅ローン控除を満額受けられない可能性がある

住宅取得等資金に係る贈与税の非課税措置と住宅ローン控除は、両方とも利用することが可能です。

たとえば、新築住宅で「長期優良住宅」または「低炭素住宅」を建てた場合、1年間で35万円が最大の控除額になります。控除期間は13年間なので、最大限控除された場合、455万円が住宅ローン控除額です。

ですが、親からの支援が高額になった場合には、住宅ローンの控除額が満額受けられない可能性もあります。

住宅購入時に親からの支援ありのデメリット

住宅購入時に親からの支援があることは決して珍しいことはではありません。多くの人たちが親からの援助を受けて、住宅を購入しています。

ですが、住宅購入時に親からの支援があることでデメリットになることもあるため、注意が必要です。

住宅購入時に親から支援があることで生じるデメリットには、以下の6点があります。

  • お金を出してもらったが口も出されてしまう
  • 贈与税の申告が面倒くさい
  • 遺産相続で揉める可能性がある
  • 贈与税がかかる
  • 税務署に認めてもらえないことがある
  • 生前贈与にならない場合がある

それでは、住宅購入時に親から支援があることで生じるデメリットについて、それぞれ詳しく見ていきましょう。

お金を出してもらったが口も出されてしまう

住宅購入時に親からの支援があると、金銭的には助かるものの、住む場所や購入する住宅について、いろいろと口を出されてしまうことがあります。

口を出されても自分たちの意向と違うときにそれを跳ねのけられればいいですが、親の言いなりにならなければならないこともあるでしょう。

自分の理想通りの納得いく住宅を購入したければ、親からの支援を断った方がいいこともあります。自分の親や相手の親が口も出してくるタイプであるかを確認することは重要です。

贈与税の申告が面倒くさい

贈与を受けた場合は、非課税であっても申告する必要があります。そのため、確定申告では必ず申告書の提出をしなければなりません。

これは、贈与税非課税措置でも同じです。きちんと申告をしなければ、贈与税非課税措置が適用されないため、贈与を受けた場合には、どんなときでも申告が必要になります。

また、現金で贈与を受けているからバレないだろうと申告をしないことを選択するのは絶対にやめましょう。現金の贈与だったとしても、贈与は必ず発覚します。

もし、贈与税の申告が面倒だと感じる場合には、贈与を受けること自体を考え直すのもひとつの方法でしょう。

遺産相続で揉める可能性がある

住宅購入時に親に支援してもらう場合は、生前贈与という形になります。

そのため、子どもがAとBの2人いて、Aが500万円を生前贈与として親から住宅購入のために支援してもらっていた場合、遺産(生前贈与分を含む)が2,000万円だと、Aは遺産を500万円、Bは遺産を1,000万円もらえることになります。

ですが、住宅購入時に親から支援してもらったことをBに黙っていて後々バレたり、そもそも住宅購入時に支援をしてもらっていた事実がないと言われたりして、遺産相続で揉めてしまうことがあります。

子どもが1人ではない場合には、生前贈与は遺産相続で揉める原因になる可能性もあるので、親はしっかりと遺言書を作成しておく必要があります。

贈与税がかかる

住宅取得等資金に係る贈与税の非課税措置を利用した場合でも、親から支援を受けた金額によっては贈与税がかかることがあります。

贈与税を支払って、生前贈与をするよりも、遺産の方が多くお金を残せたというケースもあるので、親からの支援はいくらが妥当なのかを事前に確認することが大切です。

税務署に認めてもらえないことがある

親からの支援は生前贈与と見なされるため、贈与税の申告が必要となります。

生前贈与の場合、口頭でやりとりをして贈与が行われてしまうため、実際に贈与がいくら行われたのかの証拠が残りません。

そのため、贈与税の申告を行っていたとしても、税務署から認められずに追加で贈与税が加算されてしまうことがあります。

このようなトラブルに見舞われないようにするためにも、贈与を行う際には、以下の2つの方法を取っておくことが重要です。

  • 贈与契約書を作成する
  • 贈与をするときには、銀行振り込みを利用して証拠を残す

これらをしておくだけで、贈与の証明ができるため、不要な贈与税の加算などが行われずにすみます。

生前贈与にならない場合がある

生前贈与としてしっかり手続きをしていた場合でも、贈与者が亡くなってしまった場合には、相続税の対象となってしまうことがあります。

これは生前贈与を受けた後、3年以内に贈与者が亡くなった場合に適用されます。

すでに生前贈与として、贈与税の確定申告を行っているため、支払った贈与税分は相続税から引かれます。

住宅購入時の親からの支援と贈与税について

住宅購入時の親からの支援は、現金でもらうことになります。

その際、贈与税がかかるケースと贈与税がかからない非課税のケースがあることは知っておかなければなりません。

ここでは、「贈与税について」と「住宅購入時の親からの贈与税」について、詳しくご紹介いたします。

贈与税とは?

基本的に贈与税は、特例贈与財産用に該当しない場合には、110万円を超えたら課税対象になります。

たとえば、500万円を贈与された場合には、500万円から110万円を引いた350万円が課税対象です。

住宅購入時の親からの贈与税とは?

住宅購入時の親からの贈与税は、基本的な贈与税とは異なります。これは、非課税の特例によるものです。

国税庁ホームページ「No.4508 直系尊属から住宅取得等資金の贈与を受けた場合の非課税」では、住宅購入時の親からの贈与税について、以下のように定められています。

令和4年1月1日から令和5年12月31日までの間に、父母や祖父母など直系尊属からの贈与により、自己の居住の用に供する住宅用の家屋の新築、取得または増改築等(以下「新築等」といいます。)の対価に充てるための金銭(以下「住宅取得等資金」といいます。)を取得した場合において、一定の要件を満たすときは、次の非課税限度額までの金額について、贈与税が非課税となります(以下「非課税の特例」といいます。)。

非課税限度額
贈与を受けた人ごとに省エネ等住宅の場合には1,000万円まで、それ以外の住宅の場合には500万円までの住宅取得等資金の贈与が非課税となります。

(注1) 既に非課税の特例の適用を受けて贈与税が非課税となった金額がある場合には、その金額を控除した残額が非課税限度額となります(一定の場合を除きます。)。

(注2) 「省エネ等住宅」とは、次の①から③の省エネ等基準のいずれかに適合する住宅用の家屋であることにつき、住宅性能証明書など一定の書類を贈与税の申告書に添付することにより証明されたものをいいます。

① 断熱等性能等級4以上または一次エネルギー消費量等級4以上であること。

② 耐震等級(構造躯体の倒壊等防止)2以上または免震建築物であること。

③ 高齢者等配慮対策等級(専用部分)3以上であること。

<引用:国税庁ホームページ「No.4508 直系尊属から住宅取得等資金の贈与を受けた場合の非課税」>

また、受贈者の要件として以下も定められています。

贈与を受けた年の年分の所得税に係る合計所得金額が2,000万円以下(新築等をする住宅用の家屋の床面積が40平方メートル以上50平方メートル未満の場合は、1,000万円以下)であること。

<引用:国税庁ホームページ「No.4508 直系尊属から住宅取得等資金の贈与を受けた場合の非課税」>

このように、どのような住宅を建てるか、贈与受けた年の所得税に係る合計所得金額によって、贈与税の課税・非課税は異なります。

贈与税非課税措置とは?その要件と申請手続き

住宅購入時に親から支援を受けたときに贈与税が問題となりますが、「住宅取得等資金に係る贈与税の非課税措置」という贈与税が非課税になる措置が存在しています。

これは、「住宅購入時の親からの支援と贈与税について」の「住宅購入時の親からの贈与税とは?」でも説明した通りです。

また、国土交通省のホームページでも「住宅取得等資金に係る贈与税の非課税措置」として、以下の内容が定められています。

住宅取得者の初期負担の軽減を通じて、良質な住宅ストックの形成と居住水準の向上を図るため、父母や祖父母などの直系尊属から、住宅の新築・取得又は増改築等のための資金を贈与により受けた場合に、一定額までの贈与につき贈与税が非課税になる制度です。(適用期限:令和5年12月31日)

<引用:国土交通省のホームページ「住宅取得等資金に係る贈与税の非課税措置」>

要件は、「贈与を受けた年の受贈者の合計所得金額が2,000万円以下」とされています。

申請手続きの方法とは?

「住宅取得等資金に係る贈与税の非課税措置」の申請手続き方法は、国税庁ホームページ「No.4508 直系尊属から住宅取得等資金の贈与を受けた場合の非課税」で以下のように定められています。

非課税の特例の適用を受けるためには、贈与を受けた年の翌年2月1日から3月15日までの間に、非課税の特例の適用を受ける旨を記載した贈与税の申告書に戸籍の謄本、新築や取得の契約書の写しなど一定の書類を添付して、納税地の所轄税務署に提出する必要があります。

(注) 社会保障・税番号制度「マイナンバー制度」が導入されたことに伴い、個人番号を記載した各種申告書、申請書、届出書等を提出する際には、個人番号カード等の一定の本人確認書類の提示または写しの添付が必要になります。

<引用:国税庁ホームページ「No.4508 直系尊属から住宅取得等資金の贈与を受けた場合の非課税」>

このように、書類を一式そろえて申請手続きをしなければ、住宅取得等資金に係る贈与税の非課税措置を受けることはできません。必ず期限内に住宅取得等資金に係る贈与税の非課税措置の申請手続きを行うようにしましょう。

贈与税の確定申告をする手順とは?

贈与税の確定申告は、e-Tax(電子申告)を利用して提出する方法と、作成した申告書を印刷して郵送する方法、作成した申告書を印刷して税務署に持って行く方法の3つがあります。

国税庁のホームページの「確定申告書等作成コーナー」から贈与税の確定申告書類の作成は可能です。「作成開始」というボタンをクリックし、どの形式で提出するかを選択します。
提出する形式を選択したら、指示に従って、贈与税の申告書作成を行っていきます。

ここでは、作成した申告書を印刷して提出する場合の手順 について説明します。

  1. 「贈与税の申告書作成開始(贈与税の申告書作成コーナーへ」)をクリックします。
  2. 「贈与税贈与税の申告書作成開始」をクリックします。
  3. 生年月日を入力します。
  4. 贈与の種類を「一般の贈与(基礎控除額110万円)」・「住宅取得等資金の非課税の適用を受ける財産」・「配偶者控除の適用を受ける財産(配偶者控除額最高2,000万円)」の中から該当する項目を選択します。今回は住宅購入による贈与のため、「住宅取得等資金の非課税の適用を受ける財産」を選択します。
  5. 非課税の適用要件チェック(その1)の項目に回答します。
  6. 非課税の適用要件チェック(その2)の項目に回答します。
  7. 非課税の適用を受ける財産の入力(省エネ等住宅 住宅資金非課税限度額 1,000万円)を入力します。
  8. 課税制度選択を選択します。
  9. 取得財産の入力(非課税)を確認します。
  10. 贈与税額計算結果表示が表示されます。
  11. 住所・氏名等の入力に入力をします。
  12. 贈与税贈与税の申告書作成が終了します。
  13. 印刷して、郵送また持って行って提出したら完了です。

まとめ:住宅購入時に親からの支援なし・支援ありの違い

住宅購入時に親からの支援なしの理由には、実にさまざまな背景があります。支援があることが必ずしもよいことというわけではありません。住宅購入時に親からの支援なしということは、住宅購入時に親からの支援ありのデメリットがないということでもあります。

デメリットにはさまざまな問題をはらんでいるため、親からの支援のメリットである費用の負担が少なくなるといった点と比較しながら、どちらがいいかを考える必要があります。また、親からの援助なしで住宅を購入する際の注意点と対処法についても把握しておくことは重要なので、住宅購入時に親からの支援なしの場合には、しっかりと確認しておきましょう。

このほか、住宅購入時に親からの支援がある場合には、生前贈与となるため、住宅購入時の親からの支援と贈与税について知っておかなければなりません。生前贈与にはなりますが、一般的な贈与ではなく、贈与税非課税措置が適用されるので、その要件と申請手続きについても事前に確認しておくようにしましょう。