実家の敷地内に家を建てることになった場合、どんなメリットやデメリットがあるのかを知りたくなるのではないでしょうか?
土地を探して、家を建てることと実家の敷地内に家を建てることは似て非なるものなので、事前調査が重要です。
この記事では、実家の敷地内に家を建てるメリットやデメリットをはじめ、実家の敷地内に家を建てる際の税金の知識、実家の敷地内に家を建てる際の住宅ローンについて、実家の敷地内に家を建てる場合によくあるトラブルと回避方法について、詳しくご紹介いたします。
実家の敷地内に家を建てるメリット
家を建てるとき、どんな土地に建てるかは重要なことです。土地のある場所は交通の便がよいか、土地には不備はなく改良する必要はないかなど、さまざまな観点から土地を判断しなければなりません。
ですが、たくさんある土地の中から、実家の敷地内の土地に家を建てることになることもあるでしょう。
実家の敷地内に家を建てる場合、メリットは多数あります。メリットを知っておくことで、実家の敷地内に家を建てるときのよい判断材料となるでしょう。
実家の敷地内に家を建てるメリットには、以下の7点があります。
- 土地を購入するお金がかからない
- 住宅ローンの審査に通過しやすい
- 相続税の節税ができることがある
- 土地代がかからないので家にお金をかけられる
- 親が近くにいるので子どもの面倒を見てもらいやすい 親からの金銭的な援助を受けやすい
- 親に何かあったときにすぐに駆けつけられる
- 孫に会いやすい
それでは、実家の敷地内に家を建てるメリットについて、それぞれ詳しく見ていきましょう。
土地を購入するときにかかるお金がかからない
家を建てるときにかかるお金は、主に土地代と建物代の2つです。そのうちのひとつである土地を購入するお金が実家の敷地内に建てるとかかりません。
土地を購入するお金がかからないということは、それに付随するお金もかからないということです。土地を購入するには、以下のお金がかかります。
- 手付金
- 仲介手数料
- 収入印紙代
土地の購入に必要なこれらの費用がかからないため、その分も安く済むといったメリットがあります。
住宅ローンの審査に通過しやすい
住宅ローンを契約するとき、注文住宅の場合は土地と建物の住宅ローンを別々に契約しなければなりません。
反対に建売住宅や分譲住宅の場合は、土地と建物をまとめて購入するため、住宅ローンはまとめての契約になります。
土地と建物の住宅ローンを別々に契約するのは、土地と建物の住宅ローンをまとめて契約する場合よりも審査の難易度が高くなります。
これは、土地と建物の住宅ローンを別々に契約する方が住宅ローンで借り入れる金額が高額になるためです。
このことからもわかるように、住宅ローンは高額な場合よりも低額の方が審査に通りやすくなっています。
実家の敷地内に家を建てる場合、土地の住宅ローンを契約しないため、建物のみの住宅ローンの契約です。
そのため、住宅ローンで借り入れる金額が低額になり、住宅ローンの審査に通過しやすくなります。
相続税の節税ができることがある
実家の敷地内に家を建てる場合、相続税の節税ができることがあります。これは、実家の敷地内に家を建てることが使用借地に当たる場合です。
使用借地の場合は、土地を借りているだけなので、その土地の上に家を建てていても相続だとはみなされません。
そのため、土地をもらい受けた場合にかかる相続税を払うことなく、実家の土地に家を建てることが可能になります。
土地代がかからないので家にお金をかけられる
実家の敷地内に家を建てると、土地を購入しなくて済むので、土地代が必要ありません。
土地代が必要なくなると、その分のお金が浮きます。浮いたお金は貯金するのもいいですが、その分を建物にかけるのもよいでしょう。
理想の家を建てたいと思う人は数多くいますが、予算面で折り合いがつかず諦めている人は珍しくありません。
ですが、実家の敷地内に家を建てれば、土地代が浮くのでその分家を建てるのに使うと理想の家を建てやすくなります。
もちろん、理想が高ければ、理想通りの家を建てることは難しいかもしれませんが、多くの場合は理想通りの家を建てられるでしょう。
親が近くにいるので子ども(孫)の面倒を見てもらいやすい
実家の敷地内に家を建てると、親がすぐそこにいるため、子ども(孫)の面倒を見てもらいやすくなります。
この場合、親がすでに仕事をしていないことが条件にはなりますが、親が子ども(孫)を迎えに行けなくても代わりに祖父母である親が迎えに行くなど、子育てをする上で手助けをしてもらえるといったメリットがあります。
親からの金銭的な援助を受けやすい
実家の敷地内に家を建てると、親との距離が近くなるため、金銭的な援助も受けやすくなります。
そもそも、実家の敷地内に家を建てられること自体が金銭的な援助のひとつです。
親に何かあったときにすぐに駆けつけられる
実家の敷地内に家を建てると、親がすぐ近くに住んでいるため、親が病気をしたりケガをしたりしたときに、すぐに駆けつけることができます。
また、介護が必要になったときにも、衣食住を共にすることなく介護ができるため、同居で介護するよりも負担が少ないといったメリットがあります。
孫に会いやすい
実家の敷地内に家があると、親である祖父母が近くにいるため、祖父母は孫に会いやすいといったメリットがあります。
孫の行事にも参加しやすいので、日取りを合わせるのも遠くに住んでいるよりも手軽であるといえるでしょう。
実家の敷地内に家を建てるデメリット
実家の敷地内に家を建てるメリットは、住宅ローンの審査のことから日々の生活に至るまで実にさまざまです。
ですが、実家の敷地内に家を建てる場合、デメリットも存在しています。
実家の敷地内に家を建てるデメリットも知っておくことで、実家の敷地内に家を建てなければよかったと思う可能性を低くすることが可能です。
実家の敷地内に家を建てるデメリットには、以下の6点があります。
- 相続のときにトラブルに発展することがある
- 住宅ローンの支払いができなくなると、親に迷惑がかかる
- 親が過干渉になることがある
- 義両親との関係が悪化することがある
- 孫の面倒をみるのがつらくなる
- 離婚するときに大変
それでは、実家の敷地内に家を建てるデメリットについて、それぞれ詳しく見ていきましょう。
相続のときにトラブルに発展することがある
実家の敷地内に家を建てる場合、相続のときにトラブルが起きがちなのが、二世帯住宅を建てたときです。
二世帯住宅の場合、親の土地に二世帯住宅で一緒に住んでいる兄弟姉妹のものになることが多いでしょう。
ですが、親の遺産が土地しかない場合、遺産相続で揉める可能性があります。
遺産相続で揉めないように、実家の敷地内に家を建てる場合には、兄弟姉妹に話を通しておくことが大切です。
住宅ローンの支払いができなくなると、親に迷惑がかかる
実家の敷地内に家を建てる場合、住宅ローンの支払いができなくなると、親に迷惑がかかることがあります。これは、土地が担保になってしまうためです。
住宅ローンが支払えなくなった場合には、土地が他人に渡る可能性があるため、住宅ローンが支払えなくならないようにきちんと計画を立てるようにしましょう。
万が一、住宅ローンの支払いが難しくなるようなことがあれば、早い段階で金融機関に相談するのが重要です。
親が過干渉になることがある
実家の敷地内に家を建てると、親が過干渉になることがあります。親はよかれと思ってやってくれたことであっても、踏み込まれたと感じることもあるでしょう。
別の世帯で住んでいるものの、家が近いことによって、同居と同じような温度感で接せられて、戸惑う例も少なくありません。
義両親との関係が悪化することがある
実家の敷地内に家を建てると、土地をもらったり、借りたりしているという負い目があるため、義両親に強く言えないこともあるでしょう。
ですが、義理の息子(婿)や義理の娘(嫁)が義両親への不満を溜めてしまうというのはよくあることです。
実家の敷地内に家があることで、どうしても物理的な距離が近くなってしまいます。
家でゆっくりくつろぎたくても、実家に呼び出されたり、夫婦と子どもだけで過ごしたいときに割り込まれたりすることで、義両親との距離を置きたいと考え始めてしまうことにつながります。
義両親との適切な距離を取れなくなってしまい、関係が悪化してしまうといったデメリットがあります。
孫の面倒をみるのがつらくなる
実家の敷地内に家を建てると、いつでも孫に会えるといったメリットがありますが、子どもの親が孫の面倒を押し付けてくる可能性があります。
孫の面倒を見るために、自分の予定を変更したり、自由度が減ってしまったりといったデメリットが出てくることがあるため、注意が必要です。
離婚するときに大変
実家の敷地内に家を建てる場合、土地を親から相続する場合と使用貸借契約の場合があります。使用貸借契約とは、無償で土地を貸し付けることです。
使用貸借契約は、契約書を交わすこともありますが、実家の敷地内に家を建てる場合は、口約束で締結されることが多いのが特徴です。
ですが、離婚するときに厄介なのがこの使用貸借契約です。相続している場合は、土地も家を建てた夫婦のものになります。しかし、使用貸借契約では、土地は親のものであるため、財産分与は建物だけになります。
財産分与で建物を売却する場合にはトラブルになることはありませんが、義理の息子(婿)や義理の娘(嫁)が住むとなった場合には、トラブルに発展することがあります。
これは、使用貸借契約の場合、口約束で成立してしまいますが、義理の息子(婿)や義理の娘(嫁)が住むときには、借地契約を新たに結ばなければならないからです。
借地契約には最低年数があり、その期間は家から出て行ってほしいと思っても出ていかせることはできません。そのため、親は借地契約を結ぶかを慎重に考える必要があります。
実家の敷地内に家を建てる際の税金の知識
実家の敷地内に家を建てる際の税金の知識はしっかり持っておくようにしましょう。
どのような税金が発生し、どのような税金の支払いが必要かを事前に知っておかなければ、払わなければならなくなったときに困ってしまうことが考えられます。
実家の敷地内に家を建てる際の税金には、以下の6点があります。
- 所得税
- 贈与税
- 相続税
- 固定資産税
- 不動産取得税
- 登録免許税
※ただし、これらの税金は実家の敷地内に家を建てるときの条件によって異なります。
それでは、実家の敷地内に家を建てる際の税金について、それぞれ詳しく見ていきましょう。
所得税とは?
所得税とは、個人の所得にかかる税金のことです。
所得税は以下の10種類に分かれています。
1 利子所得
2 配当所得
3 不動産所得
4 事業所得
5 給与所得
6 退職所得
7 山林所得
8 譲渡所得
9 一時所得
10 雑所得
<引用:国税庁ホームページ「所得税のしくみ」>
実家の敷地内に家を建てる場合は、この中の不動産所得に該当します。
また、該当するのは、親から土地を購入したり、有償で借りたりした場合です。このとき、所得税を支払うのは親になります。
贈与税とは?
贈与税とは、贈与によって財産を受け取った場合にかかる税金のことです。ただし、1年間に受け取った財産が110万円以下の場合には、贈与税はかかりません。
国税庁ホームページ「No.4508 直系尊属から住宅取得等資金の贈与を受けた場合の非課税」では、土地を贈与されたときの贈与税について、以下のように定められています。
令和4年1月1日から令和5年12月31日までの間に、父母や祖父母など直系尊属からの贈与により、自己の居住の用に供する住宅用の家屋の新築、取得または増改築等(以下「新築等」といいます。)の対価に充てるための金銭(以下「住宅取得等資金」といいます。)を取得した場合において、一定の要件を満たすときは、次の非課税限度額までの金額について、贈与税が非課税となります(以下「非課税の特例」といいます。)。
非課税限度額
贈与を受けた人ごとに省エネ等住宅の場合には1,000万円まで、それ以外の住宅の場合には500万円までの住宅取得等資金の贈与が非課税となります。
(注1) 既に非課税の特例の適用を受けて贈与税が非課税となった金額がある場合には、その金額を控除した残額が非課税限度額となります(一定の場合を除きます。)。
(注2) 「省エネ等住宅」とは、次の①から③の省エネ等基準のいずれかに適合する住宅用の家屋であることにつき、住宅性能証明書など一定の書類を贈与税の申告書に添付することにより証明されたものをいいます。
① 断熱等性能等級4以上または一次エネルギー消費量等級4以上であること。
② 耐震等級(構造躯体の倒壊等防止)2以上または免震建築物であること。
③ 高齢者等配慮対策等級(専用部分)3以上であること。
<引用:国税庁ホームページ「No.4508 直系尊属から住宅取得等資金の贈与を受けた場合の非課税」>
このように、贈与税の支払いが生じるケースは、敷地内に家を建てるときに親から土地をもらったときです。
相続税とは?
相続税とは、親族が亡くなったときに受け継いだ財産を相続したときにかかる税金です。
使用貸借契約で無償で親から土地を借りていた場合には、後に相続することになるため、親が亡くなったときに相続税がかかります。
固定資産税とは?
固定資産税とは、土地や建物などの固定資産にかかる税金のことです。
実家の敷地内に家を建てる場合、親から使用貸借契約で無償で土地を借りているのであれば、土地の固定資産税は親が支払い、建物の分は子どもが支払います。
ただし、土地が親名義ではなくなっている場合には、土地の固定資産税も子どもが支払うことになります。
不動産取得税とは?
不動産取得税とは、土地や建物の購入をはじめ、贈与などで不動産を取得したときにかかる税金です。
そのため、不動産取得税は実家の敷地内に家を建てる場合、土地がどんな状態であれ、建物には必ずかかります。
土地に不動産取得税がかかる場合は、土地を親から無償でもらったり、安く譲ってもらったときです。
登録免許税とは?
登録免許税とは、不動産に限ると、不動産の登記や登録についてかかる税金です。
土地を親から無償でもらったり、安く譲ってもらったときに支払いが生じます。
実家の敷地内に家を建てる際の住宅ローンについて
実家の敷地内に家を建てる際の住宅ローンは、土地の住宅ローンを契約する必要がなく、建物の住宅ローンのみになります。
建物の住宅ローンのみの場合、借り入れる金額が土地と建物の住宅ローンと比較して、低額になるため、事前審査も本審査も通過しやすいといった特徴があります。
注文住宅であっても、基本的な注文住宅とは異なり、借り入れる金額が低額なので、月々の支払いも少なくて済みます。
実家の敷地内に家を建てる場合によくあるトラブルと回避方法
実家の敷地内に家を建てる場合、よいことばかりではありません。親との距離が近くなることや金銭的な面でトラブルが起こることがあります。
実家の敷地内に家を建てることで起こりやすいトラブルは、親との距離感から来る問題が多い傾向にあります。
たとえば、子どもを親に預けすぎたり、親が何かする度に干渉してきたりといったものです。
これらのトラブルを回避するためには、行き来する日数や子どもを預ける日数をあらかじめ決めておくことが大切でしょう。
最初から無理のない日数を指定して、お互いが守れば、親未関係がギスギスすることは避けられます。
どちらかが約束を破ってしまうと、関係が悪くなるので決めた約束事を守るようにしましょう。
また、金銭面では相続などのトラブルが起きやすい傾向にあります。相続で揉めるのは実家の敷地内に家を建てた土地しか遺産がないケースです。
相続で揉めないようにするためには、親を交えて、兄弟姉妹間でしっかり話し合うことが必要になります。可能であれば、遺言書の作成もしておくとよいでしょう。
まとめ:実家の敷地内に家を建てるリスクと注意点
実家の敷地内に家を建てる場合、メリットもデメリットもそれぞれあります。
メリットとしては、安く家が建てられたり、親に子どもを見てもらえたりするなど、生活の質を上げられるものが多い傾向にあります。
また、デメリットとしては、相続で揉めてしまう可能性があったり、親との関係性が悪化してしまったりといった悪いことが重なったときに生じるものが多い傾向にあります。
そのため、実家の敷地内に家を建てるメリットとデメリットをしっかり把握して判断することが大切です。
それだけでなく、実家の敷地内に家を建てる際の税金の知識も持っておくようにしましょう。どんな税金がかかるかを知っておくことは、支払いをする上で必要になってきます。