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工事請負契約は着工前なら解除(自己都合)できる?違約金のルールやキャンセル時の注意点と手続きを紹介

工事請負契約をしたものの、着工前に自己都合で解除したい場合、どうすればいいのかわからない方も多いのではないでしょうか?工事請負契約を着工前に自己都合で解除したいと思ったら、まずは詳細について調べることから始めましょう。

この記事では、着工前なら工事請負契約を自己都合によって解除できるかをはじめ、工事請負契約の自己都合での解除に関する違約金について、工事請負契約の解約・キャンセルの基本的なルールについて、工事請負契約の自己都合での解約手続きについて、着工前の工事請負契約解約の注意点について、詳しくご紹介しています。

着工前なら工事請負契約を自己都合によって解除できる?

着工前なら工事請負契約を自己都合によって解除することは可能です。

着工前なら工事請負契約を自己都合によって解除することが可能であることは、民法第六百四十一条でも以下のように定義されています。

(注文者による契約の解除)

第六百四十一条 請負人が仕事を完成しない間は、注文者は、いつでも損害を賠償して契約の解除をすることができる。
<引用:明治二十九年法律第八十九号 民法 第六百四十一条

工事請負契約の自己都合での解除に関する違約金について

工事請負契約の自己都合での解約手続きには、違約金が発生します。違約金の内容は賠償金です。これは、民法第六百四十一条でも以下のように定義されています。

(注文者による契約の解除)
第六百四十一条 請負人が仕事を完成しない間は、注文者は、いつでも損害を賠償して契約の解除をすることができる。
<引用:明治二十九年法律第八十九号 民法 第六百四十一条

工事請負契約の自己都合での解約手続きするときの賠償金の詳細は以下のようなものが含まれています。

  • 打ち合わせをした際の人件費
  • 図面の制作費用
  • 地盤調査の費用
  • すでに手配してしまっている建築部材の材料費

売主(ハウスメーカーや工務店)はすでに家を建てるために、さまざまな部分で仕事をしています。そのため、その分を違約金という形で請求されます。

手付金から賠償金を差し引いた金額は買主の手元に戻ってきます。場合によっては、賠償金を違約金としてすべて返金されない可能性もあるので、売主(ハウスメーカーや工務店)との話し合いが重要となるでしょう。

工事請負契約の解約・キャンセルの基本的なルールについて

工事請負契約の解約・キャンセルには、基本的に3つのルールが存在しています。

以下の3つが工事請負契約の解約・キャンセルの基本的なルールです。

  • 合意解約
  • 手付解除
  • 債務不履行による解除

それでは、この3つの工事請負契約の解約・キャンセルの基本的なルールをそれぞれ詳しく見ていきましょう。

合意解約とは?

買主と売主(ハウスメーカーや工務店)の双方の合意によって、工事請負契約をすることを「合意解約」といいます。

違約金が発生する場合は、合意解約で違約金の金額も合意することになります。

手付解除とは?

買主が売主(ハウスメーカーや工務店)に支払った手付金を手放すことで、工事請負契約を解除することを「手付解除」といいます。

手付金は住宅購入の10~20%程度なので、高額な費用であるといえます。手付解除を行なう際には、合意解約の検討も併せて行うとよいでしょう。

基本的に手付金を手放すことで、工事請負契約を解除できますが、売主(ハウスメーカーや工務店)がすでに契約の履行に着手している場合には、工事請負契約を解除できません。

手付解除については、民法第五百五十七条と第五百五十九条にも、以下のように定義されています。

(手付)

第五百五十七条 買主が売主に手付を交付したときは、買主はその手付を放棄し、売主はその倍額を現実に提供して、契約の解除をすることができる。ただし、その相手方が契約の履行に着手した後は、この限りでない。

<引用:明治二十九年法律第八十九号 民法 第五百五十七条

(有償契約への準用)

第五百五十九条 この節の規定は、売買以外の有償契約について準用する。ただし、その有償契約の性質がこれを許さないときは、この限りでない。

<引用:明治二十九年法律第八十九号 民法 第五百五十九条

債務不履行による解除とは?

売主(ハウスメーカーや工務店)に契約違反が見つかったにも関わらず、売主(ハウスメーカーや工務店)が措置をとらない場合に行われることを「債務不履行による解除」といいます。

債務不履行には、以下の3つがあります。

  • 履行遅滞
  • 不完全履行
  • 履行不能

債務不履行の3種類の詳細は以下の通りです。

履行遅滞とは、履行期日に債務が履行されていないことをいいます。

不完全履行とは、履行された内容が不完全なことをいいます。

履行不能とは、履行が不可能になったことをいいます。

これらの債務不履行が確認された場合には、買主が債務不履行による解除を行うことが可能です。

債務不履行による解除については、第五百四十一条にも、以下のように定義されています。

(催告による解除)

第五百四十一条 当事者の一方がその債務を履行しない場合において、相手方が相当の期間を定めてその履行の催告をし、その期間内に履行がないときは、相手方は、契約の解除をすることができる。ただし、その期間を経過した時における債務の不履行がその契約及び取引上の社会通念に照らして軽微であるときは、この限りでない。

<引用:明治二十九年法律第八十九号 民法 第五百四十一条

工事請負契約の自己都合での解約手続きについて

工事請負契約の自己都合での解約手続きは、合意解約と手付解除で方法が異なります。

それでは、工事請負契約の自己都合での解約手続きにおける合意解約と手付解除について、それぞれ詳しく見ていきましょう。

合意解約をする場合にはどうすればいい?

合意解約をする場合には、まず、買主が売主(ハウスメーカーや工務店)に合意解約をしたい旨を伝えます。合意解約をすることになったら、買主と売主(ハウスメーカーや工務店)で解約の条件について話し合いましょう。

合意解約では、違約金(賠償金)の金額についても合意しなければなりません。違約金(賠償金)の金額についてもしっかり話し合う必要があります。違約金(賠償金)の金額についても合意が取れたら、内容をまとめて、合意書を作成します。

あとは合意書に基づいて、合意解約をしましょう。

手付解除をする場合にはどうすればいい?

手付解除をする場合は、合意解約とは異なり、話し合いを行う必要がありません。買主が売主(ハウスメーカーや工務店)に内容証明郵便を送付して意思表示をします。

手付解除する場合の内容証明郵便には、以下の4点を記載しておきましょう。

  • 買契約締結について
  • 手付金交付について
  • 売主(ハウスメーカーや工務店)が契約履行に着手していないこと
  • 手付金を手放して契約を解除すること(手付解除の意思表示)

手付解除をするときには、手付金を手放して契約解除する旨の意思表示をするだけで問題はなく、手付解除をするための理由については、記載する必要がありません。

どうしても記載したい場合には、「都合により」などと理由に言及しない形で記載しましょう。

着工前の工事請負契約解約の注意点

着工前の工事請負契約解約には、さまざまな注意点があります。着工前の工事請負契約解約には、合意解約と手付解除、債務不履行による解除の3種類あり、注意すべき点が多岐にわたるので、詳しく知っておくことが大切です。

着工前の工事請負契約解約には、以下の5点があります。

  • 工事請負契約の内容を確認する
  • 契約約款を確認する
  • 合意解約にするか手付解除にするかを決める
  • 工事請負契約解約をするときは着工前に判断する
  • 合意解約の場合、違約金(賠償金)が発生する可能性が高い
  • 債務不履行による解除の場合は、損害賠償請求ができる
  • 債務不履行による解除は、弁護士に相談した方がいいケースがある

それでは、着工前の工事請負契約解約について、それぞれ詳しく見ていきましょう。

工事請負契約の内容を確認する

工事請負契約の詳細をしっかり確認しておきましょう。

契約内容をわかっていないと、着工前の工事請負契約解約をする際にスムーズに手続きを行えない可能性があります。

契約約款を確認する

工事請負契約書よりも細かい内容が書かれているもののことを「契約約款」といいます。

問題が起こったときにどのような対応をするかをはじめ、補償方法などについても記載があります。

特に債務不履行による解除の場合は、契約約款を知っておくことが重要です。

合意解約にするか手付解除にするかを決める

着工前の工事請負契約解約をする方法には、合意解約と手付解除の2種類があるため、どちらの方法で工事請負契約解約をするかを決めましょう。

合意解約手続きでは、違約金(賠償金)がかかりますし、手付解除であれば手付金の放棄が必要です。

また、手付解除の場合は、履行に着手している場合はできないため、工事請負契約解約をしたい場合には合意解約を選択するほかありません。

工事請負契約解約をするときは着工前に判断する

着工してしまうと、合意解約は高額になってしまいますし、手付解除は以下のように定められているため、できません。

(手付)
第五百五十七条 買主が売主に手付を交付したときは、買主はその手付を放棄し、売主はその倍額を現実に提供して、契約の解除をすることができる。ただし、その相手方が契約の履行に着手した後は、この限りでない。

<引用:明治二十九年法律第八十九号 民法 第五百五十七条

合意解約でも手付解除でも着工前にしっかり判断することが重要です。

合意解約の場合、違約金(賠償金)が発生する可能性が高い

合意解約の場合、違約金(賠償金)が発生する可能性が高くなります。

すでに売主(ハウスメーカーや工務店)がさまざまな仕事をしているため、その分の賠償金が違約金として発生する可能性が高いです。

合意解約を考えている場合には、違約金(賠償金)を少額に抑えるためにも、着工前の工事請負契約解約を考えたら、早めに決断することが大切です。

債務不履行による解除の場合は、損害賠償請求ができる

債務不履行による解除の場合は、買主が売主(ハウスメーカーや工務店)に損害賠償請求ができます。

ただし、着工前は着工後の債務不履行による解除よりも損害賠償請求は低額になる傾向にあります。

債務不履行による解除は、弁護士に相談した方がいいケースがある

債務不履行による解除をする際に、専門家からアドバイスをもらえるといったメリットがあります。

債務不履行を証明しなければならないため、専門的な知識が必要ですから、債務不履行による解除をする場合には、弁護士に依頼するのが最善であるといえるでしょう。

また、損害賠償請求をする場合にも、損害賠償請求額を決めるなどの細かい作業が必要となるため、弁護士に一任すると安心できます。

着工前の自己都合による工事請負契約の解除のポイントまとめ

工事請負契約を自己都合によって解除したいと考えたとき、着工前でも可能かを知りたいと思う方も多いことでしょう。工事請負契約を自己都合による解除は、着工前でも可能であるため、違約金を抑えるためにも工事請負契約を自己都合で解除したい場合には少しでも早く決断することが大切です。

工事請負契約の解約・キャンセルをする場合には、まず基本的なルールを抑え、どのような方法で着工前の自己都合による工事請負契約の解除をするかを決めなければなりません。

また、工事請負契約の自己都合での解約手続きや着工前の工事請負契約解約の注意点についても併せて理解しておくと、着工前の自己都合による工事請負契約の解除をスムーズに行うことができるでしょう。