家を建て替えたいと思っても、建て替えられない土地があるということはあまり知られていません。家を建て替えるには、接道2m以上または道幅4m以上でなければならないといった決まりがあります。しかし、建て替えられない土地であっても家を建て替えられる方法や活用方法は存在しています。
この記事では、接道2m未満の土地の建て替えはできないかをはじめ、再建築不可の土地とその救済措置、建て替えできない土地のリスクと活用方法、建て替えの際の注意点とチェックリストについて、詳しくご紹介いたします。
接道2m未満の土地の建て替えはできない?
基本的に接道2m未満の土地の建て替えはできません。
これは、以下の2つのケースのどちらかまたは両方に該当しているためです。
- 昭和二十五年法律第二百一号 建築基準法「第二節 建築物又はその敷地と道路又は壁面線との関係等」に違反している
- 「地区計画」に違反している
昭和二十五年法律第二百一号 建築基準法「第二節 建築物又はその敷地と道路又は壁面線との関係等」では、以下が定められています。
第二節 建築物又はその敷地と道路又は壁面線との関係等
(敷地等と道路との関係)
第四十三条 建築物の敷地は、道路(次に掲げるものを除く。第四十四条第一項を除き、以下同じ。)に二メートル以上接しなければならない。
一 自動車のみの交通の用に供する道路
二 地区計画の区域(地区整備計画が定められている区域のうち都市計画法第十二条の十一の規定により建築物その他の工作物の敷地として併せて利用すべき区域として定められている区域に限る。)内の道路
2 前項の規定は、次の各号のいずれかに該当する建築物については、適用しない。
一 その敷地が幅員四メートル以上の道(道路に該当するものを除き、避難及び通行の安全上必要な国土交通省令で定める基準に適合するものに限る。)に二メートル以上接する建築物のうち、利用者が少数であるものとしてその用途及び規模に関し国土交通省令で定める基準に適合するもので、特定行政庁が交通上、安全上、防火上及び衛生上支障がないと認めるもの
二 その敷地の周囲に広い空地を有する建築物その他の国土交通省令で定める基準に適合する建築物で、特定行政庁が交通上、安全上、防火上及び衛生上支障がないと認めて建築審査会の同意を得て許可したもの
<引用:昭和二十五年法律第二百一号 建築基準法「第二節 建築物又はその敷地と道路又は壁面線との関係等」>
このように、家を建てるときには、接道2m以上が必要になります。そのため、現在家が建っている敷地だったとしても、接道2m以上がないのであれば建て替えはできません。
また、「地区計画」は土地の利用方法に関してルールが決められているため、ルールに則って判断がくだされます。
再建築不可の土地とその救済措置
建て替えができない土地のことを再建築不可の土地と呼びます。再建築不可の土地は「接道2m未満の土地の建て替えはできない?」でも先述した通り、昭和二十五年法律第二百一号 建築基準法「第二節 建築物又はその敷地と道路又は壁面線との関係等」または「地区計画」に違反しています。
しかしながら、救済処置として、再建築不可の土地でも家の建て替えができる可能性があります。
昭和二十五年法律第二百一号 建築基準法「第二節 建築物又はその敷地と道路又は壁面線との関係等」と「地区計画」のどちらか、または両方の判断により、再建築不可の土地で建て替えを行なう方法には、以下の6つの救済処置があります。
- 隣接している土地のすべてを購入する
- 隣接している土地の一部を購入する
- 隣接している土地を借りる
- 自分の持っている土地を後退させ、接道2m以上または道幅4m以上を確保する
- 自分の持っている土地を活用し、道幅4m以上を確保する
- 建築審査会で但し書き道路の申請をする
それでは、再建築不可の土地とその救済処置について、それぞれ詳しく見ていきましょう。
隣接している土地のすべてを購入する
再建築不可の土地は、道路と2m以上接していない場合、建て替えすることはできません。
ですが、隣接している土地のすべてを購入することで、土地と道路が接する部分を2m以上に増やすことができれば、建て替えは可能になります。
ただし、再建築不可の土地の形状により、この方法が有効な場合と有効ではない場合があります。
隣接している土地の一部を購入する
隣接している土地のすべてを購入して、道路と2m以上接していない再建築不可の土地で建て替えができるようにする方法もありますが、すべての土地を購入する場合、費用が高額になってしまうといった問題が生じます。
費用面から考えて、隣接している土地のすべての購入が難しい場合には、土地の一部を購入して接道2m以上にする方法を選択するとよいでしょう。
ただし、土地の一部だけを売却してもらえるかといった問題は残ります。
隣接している土地を借りる
隣接している土地を購入する場合、売却してもらえる状況にならなければなりません。住んでいる人がいるなど、売却の予定がない場合には、隣接している土地を購入して対処するのは、現実的ではないといえるでしょう。
しかし、隣接している土地を借りられれば、問題は解決します。隣接している土地を借りるのは、解体から建て替えの時期だけでOKです。建て替えの時期に隣接している土地を借りることによって、再建築不可の土地が道路に2m以上接しているとみなされます。
土地を借りるときには、トラブルに発展してしまわないように、土地を借りる前に必ず契約内容を書面にして、賃貸契約を結ぶことを忘れないようにしましょう。
自分の持っている土地を後退させ、接道2m以上または道幅4m以上を確保する
再建築不可の土地で建て替えをしたい場合には、自分の持っている土地を後退させ、接道2m未満から接道2m以上または道幅4m以上にするという方法があります。これは「セットバック」と呼ばれる方法です。
セットバックをしてしまうと、自分の土地だった部分が公道になってしまうため、そこに建物が建てられなくなり、住宅の一部として活用することができなくなってしまうというデメリットがあります。ただし、この方法は、自分の土地を後退させて道路の幅が確保できるため、家の建て替えは可能になります。
自分の持っている土地を活用し、道幅4m以上を確保する
再建築不可の土地で建て替えをしたい場合には、自分の土地を活用して、道幅4m以上を確保して私道をつくる位置指定道路にする方法もあります。
位置指定道路とは、「道路位置指定」とも呼ばれる「建築基準法(昭和二十五年法律第二百一号)(道路の定義)第四十二条 五」において定められている道路のことをいいます。
自分の持っている土地を後退させて、接道2m以上にする場合には、家と土地のある市役所・区役所・町役場に位置指定道路の申請を提出します。
申請には、測量士等に委託して作成された土地等の測量・図面(申請図)をはじめ、申請書や委任状、登記事項証明書、印鑑証明書が必要となります。
建築審査会で但し書き道路の申請をする
建築審査会とは、建築主事が置かれている都道府県と市町村に設置されている委員会のことです。
建築審査会については、昭和二十五年法律第二百一号 建築基準法「第五章 建築審査会(建築審査会)第七十八条」で以下のように規定されています。
第五章 建築審査会
(建築審査会)
第七十八条 この法律に規定する同意及び第九十四条第一項前段の審査請求に対する裁決についての議決を行わせるとともに、特定行政庁の諮問に応じて、この法律の施行に関する重要事項を調査審議させるために、建築主事を置く市町村及び都道府県に、建築審査会を置く。
2 建築審査会は、前項に規定する事務を行う外、この法律の施行に関する事項について、関係行政機関に対し建議することができる。
<引用:昭和二十五年法律第二百一号 建築基準法「第五章 建築審査会(建築審査会)第七十八条」 >
この建築審査会に、但し書き道路の申請を行うことで、建て替えできない再建築不可の土地であっても建て替えができるようになります。
これは、昭和二十五年法律第二百一号 建築基準法「第二節 建築物又はその敷地と道路又は壁面線との関係等」にも以下のように記載されているからです。
第二節 建築物又はその敷地と道路又は壁面線との関係等
(敷地等と道路との関係)
第四十三条 の2
二 その敷地の周囲に広い空地を有する建築物その他の国土交通省令で定める基準に適合する建築物で、特定行政庁が交通上、安全上、防火上及び衛生上支障がないと認めて建築審査会の同意を得て許可したもの
<引用:昭和二十五年法律第二百一号 建築基準法「第二節 建築物又はその敷地と道路又は壁面線との関係等」>
このように、但し書き道路の申請は、昭和二十五年法律第二百一号 建築基準法「第二節 建築物又はその敷地と道路又は壁面線との関係等」によって決められており、市町村の役場によっては、「認定制度」と「許可制度」として申請が必要な場合があります。
建て替えできない土地のリスクと活用方法
建て替えができない土地には、リスクもありますが、建て替えができない土地だからといって、すべてのことができなくなるわけではありません。
建て替えができなかったとしても、土地を活用する方法があります。
それでは、建て替えができない土地のリスクと活用方法について、それぞれ詳しく見ていきましょう。
建て替えができない土地のリスクとは?
建て替えができない土地のリスクには、建て替えができないことによるさまざまな問題があります。
これらの問題は建て替えができないことで生じているため、解決策がないのが現状です。
建て替えができない土地のリスクには、以下の3点があります。
- 建て替えができないため、古い家に住み続けなければならない
- 災害に遭ったときに建て直しができない
- 売却したくても売れない
それでは、建て替えができない土地のリスクについて、それぞれ詳しく見ていきましょう。
建て替えができないため、古い家に住み続けなければならない
家が古くなってくると、建て替えの必要が出てくることがあります。
古い家に住み続けると、老朽化によって問題が生じることもあるため、リスクであるといえるでしょう。
災害に遭ったときに建て直しができない
建て替えができない土地というのは、災害に遭ったときに家が壊れてしまっても建て直しができないということでもあります。
いつどんな災害に遭うかは誰にもわからないことなので、もしものときに困ってしまう可能性が高いといえるでしょう。
売却したくても売れない
建て替えができない土地は敬遠されることの多い土地でもあります。
その土地を売却したいと思ったとしても買い手がいなければ売却することはできません。
建て替えができない土地の活用方法とは?
建て替えができない土地の活用方法には、実にさまざまなものがあります。
建て替えができなくても、土地の活用方法を駆使することで、建て替えができない土地を無駄にせずすみます。
建て替えができない土地の活用方法には、以下の7点があります。
- リフォームをして住む
- リフォームまたはリノベーションをして売却する
- リノベーションして賃貸物件として貸し出す
- 建ててある家を解体して、駐車場にして貸し出す
- 建ててある家を解体して、家庭菜園場所として貸し出す
- 建ててある家を解体して、カプセルトイや自販機を設置する
- 建ててある家を解体して、トランクルームを設置する
それでは、建て替えができない土地の活用方法について、それぞれ詳しく見ていきましょう。
リフォームをして住む
建て替えができない土地の場合、建て替えはできませんが、リフォームは可能です。
家の古くなった場所をメンテナンスして住み続けるのもひとつの方法としてよいでしょう。
リフォームまたはリノベーションをして売却する
建て替えができない土地は売却するのが難しい土地でもあります。土地の場合、制限のないものの方が売れやすいからです。
それでも、建て替えができない土地を売却したい場合には、建て替えではなく、リフォームやリノベーションをして、家をキレイにしてから売却する方法があります。
必ずしも売却できるというわけではありませんが、今住んでいる家をそのまま売却するよりは、買い手がつきやすいといえるでしょう。
リノベーションして賃貸物件として貸し出す
建て替えができない土地は売却することが非常に難しい土地でもあります。
ですが、引っ越しが必要になるなど、建て替えができない土地に建っている家に住めなくなってしまうこともあるでしょう。
そんなときは、家をリノベーションして、賃貸物件として貸し出すという方法があります。
リノベーションをしているので、家はキレイになっていますし、賃貸としてなら売りに出すよりも需要が見込めるでしょう。
建ててある家を解体して、駐車場にして貸し出す
建ててある家を解体してしまったら、新しい家を建てることはできません。
ですが、敷地内まで車両が入れる道幅があるのであれば、駐車場として活用するのもよいでしょう。
駐車場にすれば、収益を上げることもできるため、建て替えができない土地としての活用方法としてよいでしょう。
建ててある家を解体して、家庭菜園の場所として貸し出す
建ててある家を解体して、家庭菜園の場所として貸し出すのも活用方法としておすすめです。
土地の場所にもよりますが、家庭菜園をしたいものの、マンション住まいで家庭菜園ができなかったり、庭がさほど広くなくて家庭菜園を断念していたりする人向けに貸し出すことが可能です。
建ててある家を解体して、カプセルトイや自販機を設置する
建ててある家を解体した後、最近流行りのカプセルトイを設置するのもおすすめです。
自分でカプセルトイの中身を補充しなければならないプランもありますが、業者の人が中身を補充してくれるプランもあるので、自分の都合に合わせて選択するとよいでしょう。
また、自販機を設置することで、建て替えのできない土地を活用することができます。自販機を置いているだけで収益が発生するため、土地を無駄なく活用するにはよい方法だといえるでしょう。
建ててある家を解体して、トランクルームを設置する
建ててある家を解体して、トランクルームとして貸し出す方法もよいでしょう。
トランクルームの場合、建設するわけではなく、設置するだけなので、建て替えができない土地であっても運用できます。
トランクルームは、一度設置するだけで収益を得られるため、建て替えができない土地の活用方法としては便利でしょう。
建て替えの際の注意点とチェックリスト
建て替えの際の注意点とチェックリストを把握しておくことは、建て替えができない土地で建て替えを行なう際には重要なことであるといえます。
建て替えをする際に注意すべきことは、建て替えができる土地にするためには、さまざまな準備が必要であり、ひとつも欠けることなく実施しなければならないということです。
また、以下は建て替えの際の注意点とチェックリストを一覧にしたものです。
以下の項目のいずれかに該当すれば、建て替えができない土地でも建て替えすることが可能になります。
【建て替えの際の注意点とチェックリスト一覧】
建て替えの際の注意点 | チェック欄 | 備考欄 |
隣接している土地のすべてを購入できたか? | ||
隣接している土地の一部を購入できたか? | ||
隣接している土地を借りられたか?
隣接している土地を借りられた場合、貸借契約書を交わしたか? |
||
セットバックの申請をしたか? | ||
位置指定道路の申請をしたか? | ||
但し書き道路の申請をしたか? |
このように、建て替えができない土地で建て替えができるようにするためには、やらなければならないことがあります。
どれかひとつでも実施すれば、建て替えができない土地であっても建て替えができるようになるため、建て替えの際はどの方法を選択するかをよく考えて実践しましょう。
まとめ:接道2m未満の土地を建て替える方法
家を建て替えたいと思っても、接道2m未満の建て替えられない土地の場合、家を建て替えることはできません。建て替えられない土地には、リスクもあるため、敬遠されがちではありますが、再建築不可の土地であったとしても救済措置があります。
救済措置とは、建て替えられない土地であったとしても、隣接している土地を購入したり借りたりするなど、さまざまな方法で建て替えを可能にすることです。また、建て替えができなかったとしても、建て替えられない土地を活用するといった方法も選択することができます。
建て替えられない土地の活用方法には、賃貸物件としての貸し出しやトランクルームとしての運用など、家をリノベーションしたり、家を解体したりして活用するものがあります。建て替えの際には、注意点をしっかり抑え、チェックリストを用いて、抜けがないように対応しましょう。